2ntブログ
なんの穴かはナイショ
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シャワーを浴びて身支度をし、とある病院にやってきました。つい最近までデートを繰り返していたTくん(仮名)の勤めている病院です。

タクシーの中からメールしたところもうすぐ手が空くとのことで、お茶でもしようということになりました。


中庭のベンチで待っていると間もなく、向こうの建物からTくんが出て来るのが見えました。端正な顔立ちに学生時代の水球で鍛えられた逞しい体躯。遠目から見ても男前な彼を眺めながら、わたしは先週のデートのことを思い出しました・・・・


*************


「あのさ、ちょっと聞いてもいいかな?」

代官山のかわいらしいフレンチ・ビストロで、おいしいお料理とワインでほろ酔いになったころにTくんが言いました。

「君がその・・・変な格好をして変なところに行っているっていう・・・噂を聞いたんだ」

「・・・え?」

「先週の土曜日、A美ちゃんが赤坂で君を見たっていうんだよね・・・その・・・女王様みたいな格好をして、首輪を着けられた男を引っ張ってクラブから出てきたって・・・」

「!!!!」

確かに、先週の土曜日はナイトメアに遊びに行っていました。お酒も入って随分とテンションの上がったわたしは、犬みたいに首輪に繋いだ送り奴隷を駐車場まで引っ張って帰ったんだっけ。ああ、まさかあの時A美に見られていたなんて・・・そういえばA美もTくんのこと狙っていたからな・・・それにしてもやり方が汚いなあのビッチ!

「そんなの信じられないけど・・・この前君の家に遊びに行った時も、変なものがいっぱいあったから・・・」

そういえば以前Tくんがわたしの家に来た時、フェティッシュな写真集や画集、肌に垂らしても熱くないソイワックスのキャンドル、柔らかな羊の革で出来たアイマスク・・・そういう少しSMの匂いのするものを見せたのでした。もちろんクロゼットの中にはもっと凶悪な鞭やコスチュームや大人のオモチャも隠されていましたが、敢えて少しかわいらしいものをチョイスして見せたのです。そんな他愛のないものですら、変態の世界とはなんら関わりなく生きてきた彼には充分に刺激的だったようでした。


なぜ、そんなものを見せたのか。

正直に申し上げると、わたしはTくんを「マゾ彼氏」にしてやろうと目論んでいたのです。ストレートの彼とは普通のお付き合いからスタートして、徐々に調教していって・・・そして、いつの日か、あのプリプリの彼のお尻にケインで醜い傷を付けてやりたい!あのハンサムな顔が恐怖で引き攣るのを見てみたい!・・・その企みの第一段階として、わたしは彼に変態世界のごく小さなピースを示したのです。まさか、それが裏目に出るなんて。

「ごめん!俺、変態とかそういうのって全然分からないから・・・残念だけど、君とは付き合えない。これからは友達として付き合っていこう・・・」


そうして、わたしはTくんと真剣な(そしてドロドロの欲望に満ちた)お付き合いをする間もなく振られてしまったのでした。



*************



「ごめん、待った?」

人の良さそうな笑顔を浮かべて、Tくんが微笑みました。・・・しかし、気のせいでしょうか?笑顔の中に若干の気まずさが見て取れます。先週、代官山から家に送ってもらった車中でも少し気まずそうでしたし、会うのはそれ以来ですから仕方がないことかも知れません。

上等な男前の彼。でも、手に入らない男がハンサムだったところで、わたしは嬉しくも何ともありません。真っ白で綺麗な歯、よく通る澄んだ声、窮屈そうな白衣の下の趣味のいいシャツ・・・そういったもののひとつひとつが憎たらしくて、気に入らない。Tくんが生きていても、わたしには何の得もない。

私たちは近くのカフェに向かって歩き出しました。中庭の木々の間を抜けて・・・ちょうど建物からも歩道からも見えない死角の部分で、わたしはTくんに例のライトを向けたのです。     



シュルルルルルルルル~



やった!わたしを振った憎い男・・・逞しかった彼も、今は身長5~6センチといったところでしょうか。わたしのハイヒールの足元で慌てふためく彼をつまみあげると、掌に乗せてまじまじと観察します。

いつも落ち着いていて男らしかった彼・・・いまはわたしの掌のうえで顔面蒼白で取り乱し、聞こえないほどの小さな声で懸命に何かを訴えています。うふふ、いい気味。わたしは口の中いっぱいに唾を溜めると、それをTくんめがけて垂らしました。溺れないように必死に逃れようとしますが、粘り気のある唾からはそう簡単に逃げられっこありません。

必死にもがく彼が顔を出すたびに、わたしは唾を浴びせかけます。何度も、何度も。唾の海から顔を覗かせるたびに、彼は怒っているような懇願するような眼でわたしを見つめます。


「ふふ、ごめんね~。残念だけど、わたし変態だから」

言いたかった台詞を言ってやりました。とたんにTくんの顔がこわばるのが見て取れます。それはそうよね、変態だから付き合えないと振った女の子が、わたしは変態だからと開き直ってニヤニヤ・・・しかも自分は虫けらみたいな姿でそれを目の当たりにしているのですから!


わたしが見たかった、Tくんの絶望に満ちた顔・・・しかし、こんな程度じゃわたしの腹の虫が治まりません。わたしが考えついた、最低で最高のお仕置き方法で彼を懲らしめてやらなくては。




(続く)








[ 2011-03-04 (Fri) 18:04 ]  
   Category:七こすり半劇場