「疲れやストレスが溜まっている時のほうが、SMやりたくなるんですよね」
そう言うマゾは、結構多い。単純に発散のためのひとつの手段なのか、疲れマラ的なシステムなのか、より大きなストレスによってストレスを流してしまおうということなのか・・・は人それぞれだと思うけど、そういうマゾたちは強烈な苦痛やら羞恥やら恐怖やら屈辱を伴う数時間のセッションを終えると、ひっじょーに晴れ晴れとした顔で歌舞伎町を後にするのである。
ストレス発散・・・といえば長風呂か男を踏んづけることしか考えていないわたしからすると「なんで虐められて発散できちゃうわけ?」と不思議で仕方がないのだけど、きっとそれがマゾという生き物なんでしょう。
しかし、一部には「晴れ晴れしない」マゾもいる。
鬱屈とした顔で現れては「人間辞めちゃえば?」と言いたくなるようなえげつない扱いを受け、来た時よりも暗い、死にそうな顔で帰る彼ら・・・「一部には」と書いたけど、わたしのところに来るマゾたちには実にこのタイプが多い。
「来なきゃ良かったです」と暗い顔をする彼らに対して、以前のわたしは「セッションが良くなかったのかな?」「SM嫌いになっちゃったかな?」と心配したりもした。でも、そういうマゾに限ってまたすぐに戻ってくるのだ。どんよりと暗い顔をして、わたしの足元に。
そんなマゾたちと付き合ううちに、なぜ彼らが暗い顔をするのか、明るくSMを楽しめないのかということがわかってきた。もちろんその理由は人によって全く異なるし、単純に「そういうふうに振る舞うのが好き」なひねくれ者のマゾもいる。なので今は変な心配はしないで全力で虐めてやることにしています。
そんなタイプの、毎回「もう来ません・・・」と言うくせに付き合いの長い某マゾとの先日のセッション。暗い顔をしてわたしの仕打ちに耐え続けた130分の終わり間際、彼は怒っているような絶望しているような顔でこう言った。
「七さんなんかに会わなければ良かったのに」
その一言は、甘く、気持ち良かった。思わずわたしは更に手の力を込めた。そして心の中で、こう呟く。知らないの?もう遅いよ。もうおまえはわたしから逃げられないんだよ、と。
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