空調の整った、快適で清潔なホテルの室内。
私はひとりのんびりと、雑誌を眺めていた。
よく冷えたビールと座り心地の良いソファ、ごく小さな音で流れる美しい音楽も相まって、私はとてもリラックスしていた。
・・・この気障りさえなければ、パーフェクトなのに。
ハイヒールの足を乗せているオットマンがまた、プルプルと小刻みに震え出したのだ。
私は片足を浮かせると、踵落としの要領で勢いよく振り下ろす。
鋲付きのハイヒールの踵が、その肉製のオットマンに食い込んだ。
オットマンのくせに生意気にも叫び声まであげているようだけど、口に履き古しのストッキングを詰め込まれているせいで「ウグーッ」というくぐもった音しか出ない。
こうして定期的に蹴ってやらないと駄目なんだもん。
ほんとうに出来の悪いオットマンね。
その時履いていた、お気に入りのルブタンのハイヒール。
そういう用途じゃないと思うけど、いいところに鋲がついてます。
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