自分が持っていないから、ついつい執着してしまう。
おまえのソコの感触を、わたしの足の甲が覚えている。ヒットしたときのたゆっとした重みを、圧迫されたソコの柔らかさと仄かに感じる芯みたいな強さを、衝撃を吸収してしまったかのように歪むその豊かな弾力性を。
おまえのソコの感触を、わたしの掌が覚えている。ふたつを擦り合わせたときの逃げるような軋むようなもどかしい感じを、強く握ると海の生き物みたいにギュウッと縮んで身を守ろうとするいじらしさを、逃げ場をなくすとさっきまでの柔らかさを失いただただ固く張り詰めるのを。
潰玉(かいぎょく) (2009/09/11) 墨谷 渉 商品詳細を見る |
女子に睾丸を潰されたい男子が主人公、な「潰玉」を読んでみました。
芥川賞候補にもなったこの作品、読んでいるだけで睾丸の仕組みにも詳しくなってしまうこと請け合いの玉潰し小説です。(「玉潰し小説が芥川賞の候補作になるなんて、いい世の中になりましたねえ」とは、わたしにこの本をくれた玉責め先生の談。確かに。)
しかしながらこのお話がSM小説と違うのは、潰すほうも潰されるほうも「相手が誰でもいい」ってこと。「誰かに睾丸を潰されたい男」と「誰かの睾丸を潰してみたい女」が偶然出会っちゃった。
わたし自身には、こういう「誰のでもいいから○○○したい」っていう欲求があまりない。睾丸は潰してみたいけど、それは潰したい相手がいるからだ。フィジカルでもメンタルでもソフトでもハードでも、まずは相手ありき。「こいつにおしっこ飲ませたい」とか「この人の身体をめちゃくちゃにしてみたい」とか、相手がいるから何かをやりたくなっちゃう。
「誰でもいい」方が、欲求としては純粋なのかもね。そういう純粋な欲求を、句読点少なめで鉤括弧なしで淡々と(個人的に大好きな文体)綴ったこの作品、玉潰しに興味のある方は是非。併録の「歓び組合」も面白かった。わたしはこっちの方が好き。
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