「SMには興味があるんだけど、自分がマゾかどうかもわからないし、痛いのも怖いのも熱いのもイヤで、あんまり経験なくって・・・」
おまえがマゾだろうがマゾじゃなかろうが、わたしにとってはどーでもいいことなのである。
飛んで火に入る夏の虫よろしく、優しそうに見えるわたしのもとにまんまとやってきた間抜けなおまえ。心の中で舌なめずりするわたしの前で、おまえはもじもじと御託を並べている。
そんなくだらないこと言う口だったら、いらない。
おまえの口は、ただわたしの役に立つためだけに付いてるのよ。
「大丈夫よ、怖くないから~」
にこにこと微笑みながら、おまえに近づいていく。目を見つめ、顔を近づけ、おまえの頬を優しくさすり・・・
カ~~~ッ、ペッ
いい?おまえの口は、喋るために付いてるんじゃないんだよ。おまえの口は今からわたしの痰ツボ。さっきまで優しく頬を撫でていたわたしの手のひらはいま、おまえの口を強引に塞いで嚥下を促している。
「ほら、ぐずぐずしないで飲みな!」
口調までもがうって変わって乱暴になったわたし。そして、さっきまで自分はマゾじゃないなどとほざいていたおまえも、熱に浮かされたような甘い目でぼんやりとわたしを見つめている。
やっぱり、男の口は、喋るために付いてるんじゃないのね。
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