Mが私の隣にそっと腰を下ろす。
よく耳を澄ませてみると、わずかにヴヴヴとモーター音がしていた。いまはかなり弱めだからこの程度だが、最強にしたら近くにいる人間には気付かれるくらいの音が出るだろう。目論見通りだ。
「M、なんか変な音が聞こえるよ。おまえの下半身からみたいだよ。」
自分では気付いていなかったのだろう。Mの耳元でそう囁くとMはハッと弾かれたように顔を上げ、震えるちいさな声で「お願いします、止めてください」と哀願した。
「何を言っているの、さっきそこのカフェのトイレでおまえが自分でお尻に突っ込んできたんじゃない。いじめて欲しいんでしょ?」
「・・・それは、七さまがそうしろと命令なさったから・・・」
Mの言葉を無視して、私は続ける。
「それよりも・・・おまえ、座る場所が違うんじゃないの?誰が私の隣に座っていいって言ったの?」
「そんな・・・お許し下さい・・・」
「じゃあ、いいけど。その代わりこれは強くするからね。音も大きくなっちゃうよ。おまえがどんなに気付かれないように頑張っても、いやらしいものを突っ込んでるって音でばれちゃうね。それでも良いならこのままそこに座っていれば?」
私は太腿の上で握っていた手をそっと開いてリモコンを見せた。さっきバッグから手を抜き取った時に手の内に隠し持っていたのだ。
「・・・!」
Mは一層顔を赤らめると、考えを巡らせているのか少しの間目を閉じて下を向いた。そして諦めたのだろう。のろのろと立ち上がると絨毯の上・・・私の足元に、ひざまずいた。
「すみません、お待たせしました!」
そこに、靴の箱をいくつも抱えた木下さんが帰ってきた。
私の足元に正座して俯くMに気付くと一瞬びっくりした顔を見せたが、そこはさすがプロ。すぐにもとのにこやかな笑顔に戻ると、Mから少し離れた私の左側に片膝をついて靴を並べ始めた。
「こちらがさっきお話ししたザノッティです。」
「わあ、綺麗な色!すごい私好み。どうしよう、今日はシンプルなの探しにきたのにこっちを買っちゃいそう…。」
「でしょう?七さんの好みは良く存じ上げてますから。」
美しいブルーの華奢な靴を手に取り、木下さんはいつもの通りそれを穿かせてくれようとする。しゃがんでいるためにグレーのタイトスカートがずり上がり、黒いストッキングに包まれている木下さんの太腿はかなり露になっている。ちらりとMに目をやると、俯きながらもやっぱりMはチラチラと木下さんの足と、ブルーのサテンの美しい靴を盗み見ていた。
そう、Mは重度の足フェチ・靴フェチなのだ。(続く)
誰のことだか分かるわね?
かわいい女の皮を被った、そこの淫乱ドマゾのおまえ。
2009年、まずはおまえをあるモノに仕立て上げることからはじめるわ。
どんなモノだか、おまえにはもちろん分かっているわよね?
最初から慰み者になれると思ったら大間違い。
最初からレディとして扱ってもらえると思うのも大間違い。
私はおまえから感情も人間性も剥奪して、完全にモノとして扱う。
「やめて」と叫んだとしても、モノが喋るわけないからもちろん私には聞こえない。
おまえがきちんと務めあげたとしても、モノとして当然だから労いもしない。
おまえは穴という穴すべてを私に開かなければいけない。
何を注ぎ込まれても、おまえに拒否する権利はない。
おまえにその覚悟があるなら、私に逢いに来なさい。
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